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INREV NAV(INREVによる純資産計算基準)
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イントロダクション
これらのガイドラインを定める際のINREVの目的は、欧州の非上場ビークルの財務報告書の中でINREV NAVを計算し、開示する方法についてのガイダンスをマネジャーに提供することである。これは、異なる種類のビークルのパフォーマンスの透明性および比較可能性につながり、投資家は提供された情報を理解できるようになる。
報告の目的のひとつは、投資のパフォーマンスおよび評価に関連する情報を投資家に提供することである。IFRSをはじめとする一般に認められた会計原則(GAAP)に基づいて計算された純資産価値は必ずしもこの目的を満たすものではない。それゆえ、このガイダンスは、マネジャーがより有意義な調整後純資産価値を計算することを可能にする業界特有の枠組みを示すために作成された。
投資家とマネジャーの双方は、不動産業界を通じて一貫性のあるアプローチを求めている。また異なる会計基準の採用が調整後純資産価値の計算の不一致につながっている。投資家とマネジャーも、欧州の非上場不動産ビークルと他のビークルのパフォーマンスおよび価値を比較できることを望んでいる。
INREV NAVは、一般に認められた会計原則に基づく純資産価値と比較して、異なる世代の投資家に利益をもたらす幅広いコストに合わせた調整の上、元になる資産や債務の貸借対照表の日における適正価額に基づく投資(単位)のより正確な経済的価値を反映したものとする。
純資産価値の主たる目的は、投資家レベルにおける会計目的でそれぞれの投資の評価について類似のビークルとのパフォーマンスを比較することである。それは、貸借対照表の日付におけるビークル単位の正味実現可能価値の測定となることを目指しておらず、他の様々な要因によって影響される場合がある。
INREV NAVの決定方法に関する原則およびガイドラインの一覧を以下に示す。必要に応じて理解を深めるために追加説明を行う。さらに、ツールおよび事例のセクションには、IFRSに基づいて作成された財務諸表からINREV NAVを算出するために必要とされる一般的な調整の多くを含むINREV NAVの計算事例が記載されている。最後に、よくある質問についての理解を深めるために一連のQ&Aを追加した。
INREV NAVガイドラインは、選択されたGAAPに従って得られた結果に調整を加えることにより会計原則に優先される。
INREV NAV調整は、マネジャーによる重要な判断(繰延税、譲渡税等)を必要とする。その結果、投資家がマネジャーの取ったポジションを理解できるよう十分な開示を含めることが重要である。
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原則
INREV NAVは、一般に認められた会計原則に基づく純資産価値と比較して、異なる世代の投資家に利益をもたらす幅広いコストに合わせた調整の上、元になる資産や債務の貸借対照表の日における適正価額に基づく投資(単位)のより正確な経済的価値を反映したものとする。
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ガイドライン
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INREV NAVの枠組みに関するファンドの資料
ファンドの資料には、評価規則および手順の詳細、評価の困難な資産の評価の際に使用される方法を含む価格設定の方法論、ビークルの重要な資産および債務のすべてについての評価の頻度を記載するものとする。
ファンドの資料は純資産価値の計算の頻度を開示するものとする。
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INREV NAV調整
調整後純資産価値の計算に関するINREV NAVのベストプラクティス要件は、オープンエンド型ビークルおよびクローズドエンド型ビークルの双方に使用するものとする。本セクションでは、必要な調整の計算の根拠としてIFRSへの直接的なリンク、および必要な場合には他の適正価額のコンセプトへの直接リンクを貼る。GAAPの他の根拠が使用される場合、INREV NAVを決定する根拠として、IFRSに合致するために必要とされるさらなる調整が必要とされる場合がある。適正価額の解釈に関するINREVの追加ガイダンスおよび会計の提供も含まれている。
IFRSに基づいて計算されたビークルの純資産価値は、INREV NAVを計算するために以下の項目について調整するものとする。
合計 | |
IFRSの財務諸表に基づく純資産価値 | x |
持分の構成要素としての特定のIFRS債務の再分類 |
|
a) 株主の長期的なビークルの持分を示す、株主融資およびハイブリッド資本商品(転換社債を含む)の再分類の効果 |
x |
b) 分配されずに債務として計上された分配金の効果 | x |
株式に類似の持分および未分配の分配金の再分類後の純資産価値 |
x |
資産および債務の適正価額 | |
c) 投資不動産の適正価額の再評価 |
x/(x) |
d) 自ら建設または開発した投資不動産の適正価額の再評価 |
x/(x) |
e) 売却目的で保有する投資物件の適正価額の再評価 |
x/(x) |
f) ファイナンス・リースに基づいてテナントに賃貸している不動産の適正価額の再評価 |
x/(x) |
g) 在庫として保有している不動産の適正価額の再評価 |
x/(x) |
h) その他の実物資産投資の適正価額の再評価 |
x/(x) |
i) 連結計上されない間接投資の適正価額の再評価 |
x/(x) |
j) 金融資産および金融債務の適正価額の再評価 |
x/(x) |
k) 第三者の建設契約の適正価額の再評価 |
x/(x) |
l) 設立費用 |
x/(x) |
m) 取得費用 |
x/(x) |
n) 契約手数料 |
x/(x) |
想定した売却の決済方法/ビークルの清算方法の効果 | |
o) 譲渡税などの購入者の費用の節約額の適正価額の再評価 |
x/(x) |
p) 繰延税金およびINREV NAV調整の税務効果の適正価額の再評価 |
x/(x) |
q) ネガティブエクイティ(ノンリコース)を有する子会社の効果 |
x/(x) |
その他の調整 | |
r) のれん | (x) |
s) INREV調整の非支配持分の効果 | x/(x) |
INREV NAV | x |
INREV NAVの構成要素としての特定のIFRS債務の再分類
a) 株主のビークルの長期的な持分を示す、株主融資およびハイブリッド資本商品(転換社債を含む)の再分類の効果
投資家の資本は、持分以外にも様々な形態を取ることがある。 例えば、株主融資や転換社債などのハイブリッド資本商品などが挙げられる。持分への参加および株主融資の組み合わせによって構成されるビークルもある。
株主融資およびハイブリッド資本商品は通常、ビークルに対する投資家の全体的な持分の一部を構成するものと見なされる。IFRSに基づくビークルの財務諸表の中で債務に区分された場合、それらはINREV NAVの持分の構成要素として含まれ、そのようなものとして再分類されるものとする。再分類される金額はIFRSの勘定における債務の簿価を反映したものとする。
ビークルの設立時のビークルの資本構造の一部を構成するそのような商品の存在、または持分と同順位の投資家融資および市場外の融資条件は、とりわけ、これらの品目がINREV NAVの一部として再分類されるべきことを示している。
この再分類は、同様の形で分配金についても処理される未収利息を考慮するものとする。
b) 分配されずに債務として計上された分配金の効果
ある状況下において分配金が法的に分配されていないにもかかわらず、債務の一部として計上される場合がある。INREV NAVの決定に関して、これらの未払配当金は純資産価値に変えるものとする。
資産および債務の適正価額
c) 投資不動産の適正価額の再評価
不動産ビークルがコストモデルに基づく投資物件の計上のためにオプションを使用する場合、この調整は、IAS第40号の適正価額のオプションに基づく適正価額への投資物件の再評価の純資産価値に対する影響を表す。
純資産価値において資産が重複してカウントされないよう、リース・インセンティブ、賃料保証、保険請求(損害、逸失賃料等)の定額法の効果は、IAS第40号およびSIC第15号に基づいて適正価額で物件を評価する際に考慮に入れるものとする。
d) 自ら建設または開発した投資不動産の適正価額の再評価
不動産ビークルが、コストモデルに基づいて、自ら建設または開発した投資不動産の説明にオプションを使用する場合、調整はIAS第40号の適正価額のオプションに基づく適正価額に対する、自ら建設または開発した投資不動産の純資産価値の再評価に対する影響を表す。
e) 売却目的で保有する投資物件の適正価額の再評価
投資物件の一部は売却目的で保有している資産または売却目的で保有している資産群に区分される場合がある。かかる投資物件の簿価は、IAS第40号に基づいて選択された会計処理(適正価額またはコストのいずれか)に左右される。
調整は、売却目的で保有している投資物件の純実現可能価値(適正価額から売却費用を引いた金額)に対する再評価(適正価額またはコストで測定)の、純資産価値に対する影響を表す。
f) ファイナンス・リースに基づいてテナントに賃貸している不動産の適正価額の再評価
ファイナンス・リースに基づいてテナントに賃貸している物件は、最初に純投資ベースで測定され、その後、一定の利回り率を反映した償却パターンに基づいて再測定される。
調整は、適正価額に対するファイナンス・リース売掛金の純資産価値に対する再評価の影響を表す。
g) 在庫として保有している不動産の適正価額の再評価
売却目的で保有している物件は、IAS第2号(棚卸資産)に基づいて財務諸表の中でコストまたは純実現可能価値のうち低い方の金額で測定される。調整は、かかる物件の純実現可能価値(適正価額から売却費用を引いた金額)に対する再評価の、純資産価値に対する影響を表す。かかる調整は「在庫として保有している物件の適正価額に対する再評価」の項に含めるものとする。
見込まれる売却日が純資産価値の計算日から1年以上経過した後となる場合、この調整を計算する際に適正価額から売却費用を差し引かないものとする。
h) その他の実物資産投資の適正価額の再評価
IAS第16号に基づくその他の不動産投資は通常、実費で計上される。
調整は、IFRS第13号に基づく適正価額の前提に従った適正価額に対する他の実物資産投資の再評価の純資産価値に対する影響を表す。
i) 連結計上されない間接投資の適正価額の再評価
組合や合弁事業への投資などの間接不動産への投資は、IFRSに基づいて異なる会計処理が行われ、簿価も異なる。かかる投資はコスト、適正価額、または純資産価値で評価することができる。
適正価額で計上されていない場合には、調整は、適正価額に対する間接投資の再評価の純資産価値に対する影響を表す。
j) 金融資産および金融債務の適正価額の再評価(借入債務の適正価額の再評価を含む)
ヘッジ商品または借入債務などの金融資産および債務は通常、適切な場合には減損を考慮の上、償却原価で測定される。適正価額で計上されていない場合、調整は、IFRSに基づいて決定された金融資産および金融債務の適正価額への再評価の純資産価値に対する影響を表す。
さらに、物件の売却の結果、ビークルは銀行債務の償却について費用を負担する場合がある。売却費用についても同様に、これらのコストは通常、IFRSに従って発生することはない。それゆえ、物件の売却が1年以内に行われると予想される場合には、関連する銀行債務の償却は1年以内に行われると予想される。 また銀行債務の期限前弁済費用は純資産価値の中で発生するものとする。
k) 第三者の建設契約の適正価額の再評価
IAS第11号に基づき、通常、第三者の建設契約は完了段階で計上される。調整は、FRS第13号の適正価額の原則に従って、適正価額に対する第三者の建設契約の再評価の純資産価値に対する影響を表す。
1回限りの費用の拡大を反映するための調整
下記に詳細に説明するように、設立費用および取得費用は資本計上され償却されるものとする。これらの調整の根拠は、費用の償却のビークルのパフォーマンスに対する効果をスムーズにするために、これらの費用を所定の期間にわたって拡大することである。さらに、異なる時期にビークルの持分を取得した、あるいは持分を手放した異なる投資家グループの間で費用を拡大する簡潔な仕組みである。
実際に、ビークルが価格設定、評価などの問題に対処する方法はこれ以外にも多く存在する。 これには、設定された割合に基づく純資産価値の額面超過額または償却割引における価格スプレッドの利用、異なる期間におけるかかる費用の資本化および償却、または実際に、ビークルの純資産価値を計算する際に、かかる費用を全く考慮に入れない場合などがある。INREV NAVは異なるビークル間の比較可能性を推進することを主たる目的としているため、INREVのアプローチは簡潔ではあるが固定された方法論である。これらの資本計上された費用は純資産価値の計算が行われるたびに減損されるため、時間の経過とともに回収することができることに留意されたい。設立費用に関する調整がビークルのINREV NAVの計算において別途開示されるので、投資家は保有の評価を行う際にこれらを考慮に入れる方法を選択することができる。
l) 設立費用
IFRSに基づき、ビークルの設立費用はビークルの設立後直ちに費用処理される。
かかる費用は資本計上され、ビークルの期間の最初の5年間にわたって償却されるものとする。
設立費用を資本計上し償却する根拠は、ビークルの経済的メリットの期間をよりよく反映することにある。
設立費用を資本計上して償却する場合で、市場環境が変化し、資本計上された設立費用をビークルの投資口の売却を通じて回収できないことが予想される場合には、調整後純資産価値を計算するたびに、発生しうる減損テストを考慮に入れるものとする。例えば、ビークルの清算を行う決定が下された場合、あるいはステークホルダーがかかる資本計上された費用の経済的メリットをもはや回復することを期待しない場合には、評価損を計上するものとする。
m) 取得費用
取得日以降最初に行われる測定日の時点で適正価額が計算される場合、適正価額モデルに基づいて、投資物件の取得費用は事実上、所得処理される。その結果、その後の適正価額の測定において物件の適正価額は物件の取得価格の総額を下回り、その他は等しくなる。
物件の取得費用は物件の取得から最初の5年間にわたって資本計上され、償却されるものとする。
取得費用の資本計上および償却の根拠は、これらの費用についてビークルへの経済的メリットの期間をよりよく反映することにある。
取得費用を資本計上して償却する場合で、市場環境が変化し、資本計上された取得費用をビークルの投資口の売却を通じて回収することができないことが予想される場合には、調整後純資産価値を計算するたびに、発生しうる減損のテストを考慮するものとする。償却の期間中に物件が売却された場合、または売却目的で保有される物件に区分される場合には、かかる物件の資本計上された取得費用の残額は費用として計上するものとする。
n) 契約手数料
債務とは、過去の出来事の結果として発生した現在の義務をいう。ビークルの運用期間の最後またはビークルの運用期間中の他の時期に支払うべき手数料は、報告日に、IFRSに基づく引当金または債務として認識する基準を満たさない場合がある。
かかる手数料の例として、契約上の取り決めによる現在の義務であるパフォーマンスフィー、売却手数料、清算費用などが挙げられる。
これら手数料の大半は通常、IFRSの会計原則に従って発生する。調整は、これらの手数料がIFRSに基づいて作成された財務諸表の中でまだ計上されておらず、発生する可能性がある場合に、ビークルの現在の純資産価値に基づいて支払うべき想定される契約手数料の額の純資産価値に対する影響を表す。調整の金額を決定するために、引当金または繰り延べ債務の測定に関するIFRSの基準(認識の基準は必ずしも必要でない)を参照するものとする。
計算の方法論の説明および基礎となる契約の条件を開示するものとする(または、かかる契約および契約条件が説明されている関係者の開示資料に言及する)。
想定した売却の決済方法/ビークルの清算方法の効果
o) 譲渡税などの購入者の費用の節約額の適正価額の再評価
物件の取得時に購入者が負担する譲渡税および購入者の費用は通常、IAS第40号に基づいて投資物件の適正価額を決定する際に控除される。
譲渡税および購入者の費用の控除額を決定する際には、物件を売却する際に売却者が手にすると予想される節約額の範囲内で、物件自体よりも、物件を所有するビークルの持分の意図する売却の効果を考慮するものとする。
それゆえ、調整は、物件を所有するビークルの持分の意図する売却に基づいて売却者のメリットとなる譲渡税および購入者の費用の起こりうる控除の、純資産価値に対するプラスの影響を表す。
マネジャーが意図する売却戦略から手にすると予想する金額の想定方法についての開示を行うものとする。現在の仕組みおよび今後の市況の双方に言及するものとする。
p) 繰延税金およびINREV NAV調整の税務効果の適正価額の再評価
IFRSの下では、繰延税金資産および債務は通常、法的税率で測定される。通常、ビークルが繰延税を実現すると想定される方法(不動産の直接売却ではなく、持分の売却を通じて投資物件が売却される場合等)は考慮されない。
調整は、IFRDに基づいて計算される金額と、想定した決済方法を考慮に入れた繰延税の予想額の間の相違の、純資産価値に対する影響を表す(税制および意図する資産および債務の売却方法または決済方法が、実際の租税債務の削減に適用された場合)。
開示には、例えば、物件の所有構造、各国の繰延税の予想に使用される主要な前提や広範なパラメーター、資産の売却のみ(意図する売却方法は考慮に入れない)を想定して推定した場合の最大の繰延税額および用いるおおよその税率をはじめとする、税制の概要を含めるものとする。
不動産売却に関する繰延税を適正価額にするために必要になる調整額の推計は、INREV NAVに大きな影響を及ぼす可能性がある。ビークルによって税制が異なる場合があるため、重大な判断が必要となり、またこの調整のための計算方法論の仕組みがビークルごとに異なる可能性がある。繰延税の全体的な調整に関する他の構成要素は、それほどの判断を必要とせず、本質的に機械的なものである。
この調整には、INREV NAV調整が純資産価値に及ぼす税制面の影響についての十分な評価を含めるものとする。
IFRSと同様に、お金の時間的価値を考慮に入れるために、繰延税金残高は割り引かれない。
q) ネガティブエクイティ(ノンリコース)を有する子会社の効果
IFRSに基づく連結集団の純資産価値には、子会社の引き受けの純債務のポジションが含まれる可能性がある。しかし実際には集団は、子会社の融資がビークルにとってノンリコースである場合には、累積損失に資金を出す法的義務および推定的義務を負わない。
このシナリオでは、完全な純債務ポジションよりもむしろ、集団のかかる子会社の持分をゼロあるいは調整後のマイナス額で認識するために、INREV NAVを計算する際にビークル側でこれらの損失を埋めるための意図または義務が生じない範囲内で、調整を行うのが適切である。
調整は、特定の子会社のネガティブエクイティの全部または一部の戻し入れの純資産価値に対するプラスの影響を示す。ビークルが子会社に株主融資を与えている場合には、それらを考慮するものとする。
その他の調整
r) のれん
事業統合を決定した法人の取得時点において、取得金額の割り当てにより、のれんが発生する可能性がある。多くの場合、不動産ビークルのかかるのれんの主要な構成物は、繰延税と購入者の費用またはIFRSの会計処理(通常は、その後の出口の想定される方法または意図する方法を考慮に入れない)における同様の項目の完全な計上と、実際の購入価格におけるかかる項目に起因する経済的価値の間の相違を反映する。IFRSに従って決定されるように、のれんのかかる構成要素がすでに純資産価値の中で償却されている場合を除き、INREV NAVにおいてこれらを償却するものとする。
s) INREV調整の非支配持分の効果
調整は、上記の調整の全体に対する非支配持分の認識の、純資産価値に対する影響を示している。
株当たりINREV NAVの計算、およびオプション、転換社債、その他の持分の行使の影響計算
INREV NAVは、集団としての投資家による全体的な投資の経済的価値を示している。ビークルの全体的なINREV NAVをエクイティ株主の各クラスに配分する際、および各投資口または持分の価値を決定する際に、1株当たり純資産価値を導き出す上で、マネジャーはビークルの持分保有者または潜在的な持分保有者(オプションの場合)が保有する権利(成功報酬、パフォーマンスフィー、マネジャーの報酬のスキーム、異なるクラスの投資口の条件、純資産価値ウォーターフォール計算、ストックオプション権利等)を考慮に入れるものとする。
ビークルが資本を調達し、資本を必要とする状況下において、拠出金を全額払い込まない投資家もいる。1株当たりのINREV NAVは、要求したものの支払いが行われていない資本を考慮に入れるものとする。
INREV NAVの開示要件
マネジャーは、純資産価値計算に関連した以下の開示を行うものとする。
- GAAP NAVとINREV NAVの間の調整は、ガイドラインNAV03に従って行うものとする。
マネジャーは、投資家がGAAP NAVとINREV NAVの間の調整の構成要素を理解できるように、重要な推定・計算方法を説明するものとする。調整の注記では主要な前提、使用した方法を説明するものとする。 特に以下を説明するものとする。
- 特定の株主の融資またはハイブリッド資本商品の持分の構成要素としての再区分の根拠
- 投資不動産、自ら建設または開発した投資不動産、ファイナンス・リースに基づいてテナントに賃貸している物件、売却目的で保有している投資物件、在庫として抱えている不動産の適正価額の決定の根拠
- その他の不動産資産への投資の推定の根拠
- 非連結間接投資の適正価額の決定の根拠
- 金融資産および債務の適正価額の計算に用いられる方法論の詳細
- 第三者との建設契約の適正価額の推定の根拠
- 契約手数料の適正価額の推定の根拠
- 繰延税金の適正価額およびINREV NAV調整の税効果の推定に用いられる前提の詳細。かかる開示は税構造の概要を示す。 不動産保有構造の詳細、特定の国における繰延税の推定に用いられる主要な前提および広範なパラメーター、資産の売却のみを前提として推定された繰延税の最大税額(意図する売却方法を考慮しない)、および用いられるおおよその税率等。
- ネガティブエクイティ(ノンリコース)を有する子会社の簿価に調整を加える根拠
- 国際会計基準(IFRS)に基づき、投資不動産の適正価額は、不動産を売却する際に売手が負担する費用を考慮に入れていない。IFRSと同様に、売却を目的として保有する場合を除き、INREVガイドラインではかかるコストの引当金を含めるための調整は必要としていない。ただしマネジャーは、現在の市場環境において強要によるものでない出口を想定して、意図する出口方法を考慮の上、不動産の売却時に発生するとみられる売却費用額を推計し、開示するものとする。
- 設立費用 - 該当する場合、減損を計上し、その理由を説明する。
- 設立費用 - 該当する場合、5年間の償却期間からの乖離の理由を説明する。
- 取得費用 - 該当する場合、減損を計上し、その理由を説明する。
- 取得費用 - 該当する場合、5年間の償却期間からの乖離の理由を説明する。
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Q&A
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設立費用と取得費用の資本計上と償却
設立費用と取得費用が資本計上され、5年間にわたって償却される場合における、INREV NAVを決定する際の調整の根拠は何か?不動産ポートフォリオがすでに適正価額で純資産価値の計算に含まれていることを考えると、これらの調整は事業体の純資産価値を膨らませるだけではないか?
INREV NAVの当初の主要な目的は、同業他社とのビークルのパフォーマンスの比較に役立つとともに、投資家レベルでの投資口への投資の会計上の評価に役立つことである。
2007年の当初のINREV NAVプロジェクトを通じて、いくつかのワークショップ、インタビュー、詳細文書のプロセスを経た後に、比較可能性を高めるために、オープンエンド型ビークルおよびクローズドエンド型ビークルの双方に対して1つのINREV NAVを適用することが決定された。一部の調整について、提案された処理は特定の種類のビークルの是正措置に必ずしも結び付かないとの指摘もあった。しかし、異なる種類のビークルのパフォーマンスを測定する際に(例えば、INREVインデックスなど)、すべてのビークルの調整を同じ方法で処理すれば比較可能性は増すだろう。
設立費用/取得費用の資本計上と償却の当初の根拠は、ビークルがこれらの費用の経済的メリットを得る期間をよりよく反映させることである。これはパフォーマンス測定および投資評価の両方に関してである。
このことは、IFRSに従った場合、設立費用はビークルの開始/立ち上げ後速やかに課税されること、また適正価額モデルに従った場合、投資不動産の取得費用は取得日以降の最初の測定において適正価額が計算される際に実質的に収入に対して課税され、いわゆるJカーブを描くという事実によって促された。
パフォーマンス測定
2007年の分析結果に基づき、INREVの意図は、Jカーブのマイナス効果を軽減するために、パフォーマンス測定(INREVインデックスなど)に調整後純資産価値を使用するというものであった。パフォーマンス測定について、異なるビンテージを用いて異なる種類のビークルが比較されるか、または1つのインデックスでベンチマーク化される場合、設立費用と取得費用の処理は、ビークルの運用期間の最初の数年間(取得段階)において、1回限りの費用として処理され、このことはベンチマークに比べてその特定ビークルのアンダーパフォーマンスにつながる。売却段階までの期間については、新規ビークルについて発生したJカーブの効果は全体のパフォーマンスのベンチマークを引き下げるため、ベンチマークを上回ることはさらに容易である。売却段階の間、売却費用の1回限りの効果はビークルの個々のパフォーマンスにマイナスの影響を与えるため、ビークルは一般的にベンチマークを上回る。
投資ビークルの投資口の評価
設立費用と不動産取得費用の償却により、いわゆる「Jカーブ」の効果は投資ビークルの投資口の評価において除去することができる。一部の投資家は評価に調整後純資産価値を用い、当時の別の投資家は、最初の3年間について投資を費用計上していた。 不動産価値の上昇によってIFRS NAVが当初のコスト価格を上回るようになって初めて、IFRS NAVを使用するようになった。
さらに、投資家が、かかる費用は価値を持ち、所期投資の一部を構成するとみなされると考えているとの指摘もあった。これらのコストは、賃料収入からの直接リターンを手にするために、また、できれば決済時に価値の上昇により間接リターンを手にするために、直接発生した。このリターンは投資の保有期間全体を通じて、投資家の元に戻ると考えられる。
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繰延税金債務に関する調整の計算
この調整はどのように計算するべきか?ポートフォリオベースまたはその他の累積ベースで、IFRS/現地のGAAPに従ってビークルについて計算される、繰延税金債務の固定比率(50%など)として計算するのは適切か?
この調整の根拠は、IFRS(および他の多くのGAAP)のもとで、繰延税金債務が名目法定税率で評価されることである。ビークルが期待する繰延税金の精算方法は通常、考慮に入れない。したがって、これに基づいて計算される繰入額は繰延税金の適正価額を表すものではない(実際の金額は、不動産資産の売却時に明確にされることが期待される)。
債務の適正価額の調整を計算する際、想定した決済方法に基づいて、調整は資産ごとに評価されるものとする。
それゆえ、各資産について、計算日において不動産にとって適切な市況ならびに意図する売却方法および資産の税構造に基づいて、最も可能性が高い売却形態(例えば、資産取引や株式取引)について考慮するものとする。まだ実現していない市況の将来の変化に基づく売却方法の変更の想定は、INREV NAV調整を計算する目的においては、主観的に過ぎると考えられる。該当する場合、売却に関連する事業体の歴史も考慮するものとする。次に、取引に課される適用税率ならびに評価された決済の方法に従って、繰延税金債務の適正価額を計算する。IFRSはバランスシートの日付時点で成立したまたは実質的に成立した税率のみを使用することを認めている。 一方、バランスシートの日付以降に成立したまたは実質的に成立した税率はINREV NAV調整を計算する目的で使用することができる。
この計算においては、承認される可能性が高い持分取引を通じて売却される不動産の売却価格の割引額を考慮に入れるものとする。例えば、不動産を所有する事業体の持分の売却は非課税(または最低税率)となるが、不動産を所有する事業体内における潜在的なキャピタルゲインについて、売却価格で控除が行われる場合などが考えられる。INREV NAV調整を計算する場合、売却取引において達成されそうな税金に加えて、この金額を考慮に入れるものとする。
それゆえ、これに基づいて上記に概説した固定比率のアプローチは、ポートフォリオの各不動産の繰延税金債務について必要とされる調整の合理的な推計を表さない限り適切でないと考えられる。
調整を二重に計算することを避けるために、調整の計算の全部または一部が、IFRS/現地のGAAPに従ってビークルについて計算される繰延税金債務にまだ含まれていないことを確認することが必須である。不動産の査定に関して、譲渡税についてこの調整とINREV調整の間に二重の計算がないことを確認するよう注意を払うものとする。疑義を避けるために、譲渡税は繰延税金の調整の計算の範囲内に含めないものとする。
それゆえ、この計算の主観的かつ複雑な性質を踏まえて、マネジャーが、計算の方法論について正式な社内方針を文書化し、それを引き続き適切なものとするために、マネジャーが(例えば、税法や市況の変化について)継続的に見直しを行うことが推奨される。全体的な所有構造、主要な前提、各国の広範なパラメーター、慣習的な最大税率(税構造がない場合)および適切な税率(%)など、全体的な税構造についての開示がなされるものとする。
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譲渡税に関する調整の計算
この調整はどのように計算するべきか?IFRS/現地のGAAPに従ってビークルの譲渡税の固定比率(50%など)で調整を計算するのは適切か?
想定した決済方法に基づく不動産評価に固有の譲渡税(および購入者の費用)の控除に対する調整の計算は、資産ごとに評価するものとする。
それゆえ、各資産について、不動産に関連する市況ならびに意図する売却方法、資産の税構造に基づく最も可能性が高い売却形態(資産取引または持分取引等)を考慮するものとする。該当する場合、売却に関する事業体の歴史や売手と購入者の間で合意した税負担の配分を考慮するものとする。これは繰延税金債務の調整の計算の根拠と同一の根拠である。不動産の適正評価において評価された売却方法が譲渡税(および購入者の費用)の引き下げをもたらす場合、INREV NAVを導き出す際にこの調整が行われる。ただし、二重計算を避けるために不動産評価にまだ含まれていない範囲内でのみ調整を含めるものとする。
この理由から、調整を計算する場合には、譲渡税およびその他の購入者の費用を別の構成要素として考慮することが重要である。いずれの場合も、同一の控除は適切でない場合がある。例えば、持分の取引による売却は譲渡税の引き下げにつながる可能性があるが、実際には、そのような取引を完了する上で求められる追加の法的支出や精査の必要性により、購入者の他の費用は増加する可能性がある。
それゆえ、これに基づくと、上記に概説した固定比率のアプローチは、それがポートフォリオの各不動産についての譲渡税と購入者の他の費用の双方について求められる調整の合理的な推計を表さない限り適切でなくなる。
それゆえ、この計算の主観的かつ複雑な性質を踏まえて、マネジャーが、計算の方法論について正式な社内方針を文書化し、それを引き続き適切なものとするために、マネジャーが(例えば、税法や市況の変化について)継続的に見直しを行うことが推奨される。金融情報の利用者が調整に関する計算の方法論を理解できるようにするため、計算する上でマネジャーが立てた主要な前提、マネジャーが予定している構造や市場環境に基づくこの追加価値の利用の仕方とともに、適切な開示を行うものとする。
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組合/合弁事業への投資
IFRS/現地のGAAP会計の中で事業体に関して計上される、事業体による組合/合弁事業への投資を評価する際に、INREVガイドラインをどのように適用すべきか? (持分法または比例連結を用いて)
INREV NAVの目的において、組合/合弁事業における事業体の保有持分の適正価額の経営陣によるベストの推定値を用いるものとする。投資の種類に応じて、これを査定するための評価方法について階層がある。
1. 活発な市場で投資が行われる場合には、計算日における指値で適正価額を計算するものとする。
2. ビークルへの投資で、契約により定められた純資産価値による償還の権利が存在する場合には、この純資産価値がINREVガイドラインと一貫性があるかどうかを問わず、保有持分の評価にこれを用いるものとする。
3. 投資がクローズドエンド型ビークルまたは同様の事業体への投資である場合で、固定された償還価格または上場価格が存在しない場合、INREVガイドラインと合致するように保有持分の適正価額を見積るものとする。
4. 投資のINREV NAVを計算する上で十分な情報が入手できない場合は、例えば最近の比較可能な取引があればそれに基づく見積などの別の評価技法を用いるものとする。
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ポートフォリオ・プレミアム/ポートフォリオ・ディスカウント
例えば独立鑑定人の評価報告書にポートフォリオは全体として各不動産の個別鑑定価値にプレミアム/ディスカウントを追加/削除するという記述がある場合に、INREV NAVの計算にポートフォリオ・プレミアム/ポートフォリオ・ディスカウントを含めるべきか?
ポートフォリオ・プレミアム/ポートフォリオ・ディスカウントは、調整後INREV NAVに含めるべきではなく、また不動産評価のINREVガイドラインに従って、不動産の適正価額の中に含めてはならない。にもかかわらず、そのようなプレミアムまたはディスカウントを別途開示することが推奨される。
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満期保有デリバティブ
オープンエンド型ビークルについて、満期時にこれらの価値がゼロになるという理由から、デリバティブのヘッジのために時価評価を行う必要はないということは当てはまらないか?
クローズドエンド型ビークルとオープンエンド型ビークルの双方について、調整後INREV NAVはすべてのヘッジング・デリバティブを適正価額で反映するものとする。